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2022.12.08

コラム

国勢調査からみる通勤通学時の自転車利用の動向③

               ~市区町村の動向~

1.市区町村別(政令指定市の行政区を除く)の自転車のみによる通勤通学

全国の市区町村の通勤通学時の利用交通手段では、その市区町村のごとの自然環境、クルマの利用動向やまちづくりのあり方などから、自転車利用が盛んなまちとそうでないまちがあります。このうち自転車利用が盛んな市区町村を2020年の国勢調査の通勤通学時利用交通手段により、見てみたいと思います。通勤通学時の利用交通手段で、自転車のみの割合が高い順に全国の50市区町村を表にしてみました。

緑色は大阪府、紫色は瀬戸内海の島、青色は兵庫県、肌色は埼玉県、黄色は京都府、薄い青色は東京都、灰色は瀬戸内海及び四国の市区町村、白色はその他である

①大阪府を筆頭として大都市圏の自治体が上位を占める
全国第一位は、門真市(31.79%)、続いて、東大阪市(29.27%)、守口市、八尾市、大東市と続きます。1位から6位まで、9位から12位、14位と15位など大阪府が18市町と全体の3分の1強となっています(表で緑のハッチのかかった市町)。前回書きましたが、都道府県別でも、大阪府(20.39%)が群を抜いて高く、2位の京都府(15.0%)に5%以上の差を付けて圧倒的に第1位であることからもこのことがうかがえます。そして、尼崎市(8位)や伊丹市(9位)などの兵庫県(都道府県別には10位、11.54%)の3市が入ります。次に戸田市(17位)、草加市(26位)、八潮市(28位)、蕨市(42位)の埼玉県(都道府県別には6位、12.66%)の4市、久御山町(18位)と京都市(23位)の京都府(都道府県別には2位)の2市町が入ります。東京都(都道府県別には5位、12.89%)も、武蔵村山市(21位)、東久留米市(27位)、小平市(29位)、東大和市(30位)など主として後半に12市区が入っています。
近畿圏の大阪府、兵庫県、京都府と東京圏の埼玉県、東京都など大都市圏の自治体が自転車の利用率が高いという特徴があります。市街地の密度が高く、交通混雑などがあるために、自転車の利用が盛んであると考えられます。

②瀬戸内海の島が高い
この間に、大分県の姫島村(7位)、広島県の大崎上島町(13位)、愛媛県の上島町(16位)という瀬戸内海の島に係る3町村が入っています。気候が温暖で雨が比較的少なく、海岸沿いなどの平坦な道路を走行できる瀬戸内海の島であるためと考えられます。

③瀬戸内海に面する市町や四国の市
さらに、松山市(22位)と高知市(31位)、徳島市(32位)、広島県の府中町(38位)と海田町(43位)、岡山市(49位)の6市町が入っています。比較的平坦で温暖な瀬戸内海に面する自治体や四国に属する県の自治体です。都道府県の順位でも愛媛県(3位、14.08%)、高知県(4位、12.96%)、広島県(7位、12.18%)、岡山県(8位、11.85%)及び徳島県(11位、11.34%)と高くなっています。

④上位の市区町村の特色
以上からみてみますと、大都市圏の市区町村と瀬戸内海の島、そして、瀬戸内海に面する又は四国に属する市の3つのパターンに分けられそうです。これらの市区町村では、その特色を生かして、一層自転車の活用が進められることを期待したいものです。

2.自転車と鉄道・電車による通勤通学

(1)自転車と鉄道・電車による通勤通学の割合

黄色は関東、青色は関西、白色は愛知県である。

自転車のみによる通勤通学は、自宅から勤務先又は学校まで、自転車で直接行くものですが、これに対して、自転車で鉄道・電車の駅まで行くものについて、高い順に全国の100市区町を表にしてみました(この場合、より細かくわかるように政令指定市は行政区を区分しています。また、100市区町としたのは、割合の差が少ないことや駐輪場を利用する可能性の高い市区町をなるべく多く表示するためです)。これを見ますと、全体的に「自転車のみ」よりは、かなり低い割合となっており、全国的傾向としては自転車で直接職場や学校に行く割合か高いといえます。
これら100の自治体の都道府県別の内訳は、大阪府32市区町、埼玉県29市区町、東京都20市区町、千葉県9市、奈良県3町、愛知県2市、神奈川県2市、京都府、兵庫県及び茨城県各1市となっています。「自転車のみ」が西高東低であったのに対して、この「自転車と鉄道・電車」は、大阪府の市区町村の数は多いですが、上位は埼玉県三芳町、浦安市など関東の都市が多く、全体として東高西低となっています。東京圏は、近畿圏に比べて、通勤距離が比較的長く、直接ドアツードアで自転車により行ける人が相対的に少ないこと、また、駅から距離のある居住地の人が比較的多いこと等により、駅まで自転車を利用する人の割合が高くなっているのではないかと考えられます。

(2) 自転車と鉄道・電車による通勤通学の人数
次に、駅前の自転車駐車空間の必要台数の絶対数を見るために、自転車と鉄道・電車による通勤通学の人数を整理したものが次の表です(政令指定市は全体と行政区の両方を入れた順位です)。
これらを見ますと、大阪市、横浜市、名古屋市、さいたま市、川崎市の順で、三大都市圏が多く、この間に札幌市や福岡市、広島市、仙台市、岡山市、静岡市、浜松市の政令指定市が点在していることがわかります。

黄色は関東、青色は関西、緑は愛知県、白色はその他である。

また、東京都23区も練馬区を筆頭に多く含まれています。なお、自転車と鉄道・電車の「割合」は、駅を介して通勤通学する人が相対的に高い割合でいるかどうかの地域の自転車利用の傾向を示すのに対して、自転車と鉄道・電車による通勤通学の「人数」は、駅前の駐輪空間に対する総需要を表すものですので、これらの人数を参考にして、駐輪空間の供給量を見極めていくことができます。

文:自転車総合研究所 所長 古倉 宗治

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