自治体の自転車活用推進計画について③
文:(公財)自転車駐車場整備センター 山本 健一
自治体の自転車活用推進計画③:シェアサイクルの活用
Ⅰ シェアサイクル関連記載のある自治体数
国土交通省(自転車活用推進本部事務局)は、12月17日に令和7年度第3回自転車の活用推進に向けた有識者会議を開催し、第3次自転車活用推進計画(素案)を議題としました。同計画素案によれば、現行の第2次計画と比べシェアサイクルの普及促進のための措置が追加・拡充されています。例えば、公共の自転車駐車場等を含むモビリティハブの設置推進も新規に位置付けられているので、駐輪場とシェアサイクルの連携が一層進む可能性もあります。
シェアサイクルについては、すでに現行計画においても普及促進のための複数の措置が位置付けられているとともに進捗状況を評価する指標として「シェアサイクル事業が位置付けられた自転車活用推進計画を策定した市区町村数:60(令和2年度実績)→240(令和7年度)」とされており、現時点でも多くの自治体の計画にシェアサイクル関連の記載が見られます。ここでは、これまで2回のコラム(①8月21日、②9月25日)で分析対象とした118自治体(1.都道府県、2.政令指定都市、3.東京特別区、4.県庁所在地、5.センター運営・管理施設のある都市)の計画におけるシェアサイクルの記載について見てみます。1~5のいずれの自治体グループにおいても多くの自治体でシェアサイクルの記載が見られますが、特に、東京特別区(計画策定済の19自治体すべて)と政令指定都市(20自治体中、19自治体)では、計画にシェアサイクルについて記載している割合が極めて高いです。

Ⅱ シェアサイクル活用を主たる目的とする取組
各自治体計画におけるシェアサイクルについての記載内容は様々です。これら記載を、その取組目的から「A.シェアサイクル導入・ポート拡大」、「B.シェアサイクルの利便性向上・利用促進」、「C.シェアサイクルの活用」に大別してみると、A(導入・拡大)とB(利便性向上・利用促進)に関するものが多いですが、C(活用)を主たる目的とした取組について記載している自治体もある程度見られます。これらC(活用)の取組の記載を、その目的から【1.災害対策】、【2.観光振興】、【3.MaaSへの位置付け・公共交通連携】、【4.その他(まちづくり等)】に分けて自治体グループ別に見てみました。シェアサイクルによる災害対策を目的とした取組の記載は東京特別区において、シェアサイクルのMaaSへの位置付け・公共交通連携を目的とした取組の記載は都道府県において多い状況です。

シェアサイクルの活用を主たる目的とした取組についての具体的な記載内容は、次のとおりです。
【1.災害対策】
・災害時のシェアサイクル活用 [山梨県、京都府、香川県、世田谷区、練馬区、金沢市、那覇市]
・災害時の職員による活用 [札幌市、千葉市、文京区、墨田区、品川区、杉並区、荒川区、立川市、豊中市、尼崎市]
・災害時の公用利用 [堺市、大分市]
・災害時の情報伝達、物資輸送 [新宿区]
・災害時の荷物運搬に活用 [静岡県]
・大規模地震発生時の市民・来街者の帰宅手段 [岡山市]
・避難所への臨時ポート設置 [広島市]
【2.観光振興】
・シェアサイクルによる観光ルート [神奈川県、福井県、札幌市、川崎市、堺市、港区、江東区、渋谷区、町田市、姫路市]
・観光マップにシェアサイクルポートの記載 [東京都、足立区]
・パンフレットでシェアサイクルの利用案内 [杉並区]
・観光ニーズに応じたステーション配置で周遊観光促進 [北九州市]
・周遊観光時のシェアサイクル利用 [北区]
・外国人旅行者の自転車観光促進 [那覇市]
・アニメスポット「聖地巡礼」への活用 [立川市]
・ポート設置による成果指標として「観光入込客数」の目標 [尼崎市]
【3.Maasへの位置付け・公共交通連携】
・MaaSにシェアサイクルを位置付け [群馬県、東京都、静岡県、和歌山県、大分県、鹿児島県、品川区、杉並区、山形市、富山市、宮崎市、立川市]
・公共交通機関とシェアサイクルの連携強化 [埼玉県、千葉県、葛飾区]
・公共交通とシェアサイクルの相互利用 [中央区]
・市内全ての鉄道駅(周辺)にポート設置 [吹田市]
【4.その他(まちづくり等)】
・シェアサイクルの移動データの活用 [沖縄県、札幌市、杉並区]
・駐輪場への長時間駐輪対策(通勤シェアサイクル) [浜松市]
・まちの活性化(回遊行動の増加等) [大阪市]
・「サイクルシティ」ブランド構築 [堺市]
・都心ウォーターフロントの回遊性向上 [神戸市]
・エリアマネジメント団体にシェアサイクルの参加 [世田谷区]
・シェアサイクルポートでの新たなモビリティ体験 [板橋区]
・自転車からモノレールへの乗り換え(都心への自転車乗り入れコントロール) [立川市]
国の次期自転車活用推進計画においてシェアサイクルの普及促進のための措置が追加・拡充されることで、今後計画変更を予定している自治体においては、シェアサイクル関連の取組事業が一層充実し、シェアサイクル活用の視点も更に多様化するのではないかと考えます。