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2026.03.19

コラム
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電動アシスト自転車③ ~自治体による補助~

文:自転車総合研究所 所長 村野 清文

Ⅰ 電動アシスト自転車普及への課題
電動アシスト自転車は、移動の可能性を広げるモビリティツールとして生産・販売ともに着実に伸びています。ただ、現時点では、普通の自転車に比べて価格が高い事が普及に向けた課題となっています。ネット通販などで6〜9万円台の製品もありますが、安全性やアフターサービス等を考慮すると、一般的には12~20万円程度の価格帯が中心であり、一般の自転車と比較すると大きな価格差があります。世帯保有率も、高年収層が高くなっています。(参考:コラム【第9回】)
他方、電動アシスト自転車の利便性をより必要としているのは、日々、子供の送迎に追われる子育て世帯や、免許返納後の移動手段を求める高齢者等です。

Ⅱ 電動アシスト自転車取得費への自治体による補助
この初期費用の壁に対して、一部の自治体では電動アシスト自転車の購入費補助を実施しています。
確認した事例を見ると補助の目的は大きく以下の5つに分類されます。
1. 子育て支援(安全確保): 安全基準に適合した幼児2人同乗用自転車の購入を助成し、安全な子育て環境を整える。
2. 高齢者・免許返納支援: 自動車免許を自主返納した高齢者(65歳以上)の移動手段を確保し、引きこもり防止や外出機会・生活圏の維持を図る。
3. 環境・カーボンニュートラル: 自動車から自転車への転換を促進し、CO2の排出を抑制し環境負荷の小さい移動を実現する。
4. 通学支援: 公共交通が不便な地域等での通学困難を解消する。
5. 就労支援・雇用確保:従業者が通勤・業務移動等を電動アシスト自転車で行える様にするための雇用者の車両購入への補助。
なお「1.子育て支援」を目的とした「幼児2人同乗用自転車」取得費の補助には、他の目的の電動アシスト自転車補助とは異なる歴史的経緯があります。
2008年、警察庁が子育てのため幼児二人を乗せている3人乗り自転車の規制強化を発表した事に対して全国的な反対運動が起こりました。警察庁は検討を行い、幼児2人同乗用自転車の基準が道路交通法施行規則(国家公安委員会規則)で定められ、2009年7月から各都道府県公安委員会規則により具体的に運用される事になり、これに適合する自転車が制度化されました。これと併せて、BAAマークなど業界の安全基準も普及し、当該基準に対応した安全性の確保が図られています。
自治体が実施している「幼児2人同乗用自転車」取得費補助金の大部分は、制度上は、電動アシスト自転車である事を要件とはしていませんが、メーカーの製造も現在は電動モデルに集約されているため、実質的に電動アシスト自転車への支援となっています。

Ⅲ 補助金制度の具体的設計と条件
各自治体の制度設計は、地域が直面し、電動アシスト自転車利用促進により対処しようとする個別課題に応じて異なります。担当部局も、各課題に応じ、子ども家庭支援課、高齢福祉課、環境政策課、教育委員会、自転車推進課など多岐にわたります 。
補助割合は本体購入価格の3分の1から2分の1が主流ですが、4分の1や定額制を採用する例もあります 。補助上限額は1万5千円から7万5千円と幅があり、自治体の財政力や政策優先度が反映されています 。
主な交付条件としては、新品購入(多くは市内販売店で)、品質保証(TSマーク, BAAマーク, SGマーク等)、防犯登録および損害賠償責任保険への加入、税の滞納がないことなどが一般的です 。

Ⅳ 補助制度の課題及び補助の役割の変化
一方で、これまで実施していた補助金、特に幼児2人同乗用自転車購入費補助を廃止する自治体も見られます。
行政資料等で、補助金廃止が確認される事例として、例えば、次の自治体が挙げられます。栃木県 下野市、埼玉県 桶川市、神奈川県 藤沢市、愛知県 豊橋市、大阪府 松原市、奈良県 生駒市
この背景には、制度上の課題と社会状況の変化があります。
第一に、補助対象とする電動アシスト自転車が珍しくなくなり、ある程度、普及が進んできたこと。これは、いわば「購入の呼び水」としての補助金は役割を終えて、今後は市場経済に任せても普及を続けていくと評価されるようになったためとも言えます。
第二に、公平性の観点です。特定の個人の耐久消費財購入に公金を投じることに対し、補助を受けない市民との不公平感が指摘されます 。特に、価格が高い財の購入を対象とする補助制度は、補助金がカバーしない残額を負担できる所得層に利用が偏る「所得逆進的な再配分効果」を持つ可能性があります。所得制限を伴わない補助は、結果として高所得層に有利な再配分効果を生んでしまうのではないかという批判です 。なお、これらの点については、補助目的に応じた補助制度利用者の属性に関するより実証的な確認も必要です。
第三に、自治体の財政事情です。リーマン・ショック後やコロナ禍での国の交付金を財源として開始された補助事業が、交付金終了後は、自主財源で実施していても継続が難しいと判断され、廃止に至るケースもあります。
他方、多くはないですが、補助を新設または継続している自治体もあります。新設した自治体では、自転車によるまちづくりの方針を打ち出す象徴的な意味があるケースもあります。また、継続している自治体においては、単なる周知目的を超えて、特定の生活課題を抱える世帯への「移動支援」という社会政策的な意味合いが強まっているように思われます。

Ⅴ 自治体による異なる対応
1.シェアサイクルの活用
近年、シェアサイクルを都市のインフラとして活用する自治体も増えてきました。例えば、大阪府の堺市、岸和田市、千葉県の柏市、我孫子市などです。
シェアサイクルは、ポート間で自由に乗り降りできるコミュニティサイクルとして移動の多様性と利便性を実現する点に意味があります。同時に、これらのシェアサイクル事業では、移動に快適・便利な電動アシスト自転車を使用している点も特徴です。一定規模以上の都市・地域でシェアサイクル事業のサービスが提供されれば、電動アシスト自転車を所有せず、すなわち自転車購入費用を負担せずに、必要な時に電動アシスト自転車を利用する事が可能となります。
これは「個人の移動ツールの所有を助ける事」に対して、「地域における移動機能をシステムとして支える事」に自治体の取組み(政策)の焦点を置いていると言えます。
2.ヘルメット取得費補助
自転車利用時のヘルメットも個人の財購入への補助ですが、改正道路交通法の施行(2023年4月)によりヘルメット着用が努力義務となった事もあり、多くの自治体がヘルメット取得への補助を実施しています。
なお、「幼児二人同乗用自転車」の制度化に先立ち、幼児のヘルメット着用努力義務は、2007年6月の道路交通法改正により法制化され、2008年6月より施行されていました。すなわち、2009年の幼児二人同乗用自転車の制度化時点で、幼児のヘルメット着用は努力義務になっていました。幼児二人同乗用自転車購入費補助の中で幼児用ヘルメット2個の費用も補助対象に含める自治体もあります。

Ⅵ 電動アシスト自転車取得補助と自転車活用推進計画
補助制度は分野横断的に実施されているため、本稿での確認は網羅的なものではありませんが、今回補助が確認された自治体における自転車活用推進計画と補助事業の関係を見ると以下のような傾向が見られます。計画内での電動アシスト自転車の一般的記述や、自治体で実施中の補助事業の説明・紹介については自治体間で差が見られます。
自転車活用推進計画
策定済み:22 未策定:21
(策定済み自治体の内訳)
電動アシスト自転車一般の記述
あり:15  なし: 7
補助事業の記述
あり: 7  なし:15

おわりに
電動アシスト自転車を巡る各自治体の対応は多様です。それは、各自治体が置かれた状況、すなわち人口(規模、増減の速度、構成等)、市街地の状況(面積、道路の整備状況、平地と坂の比率等)といった都市の在り方が多様であるためです。各自治体では、限られた予算・人員の中で、地域の実情もふまえた選択が行われています。