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経営資源を「賢く使い」、成果を「賢く得る」ことで実現する IT スタンダード化

1.はじめに

公益財団法人 自転車駐車場整備センターは、昭和54年の発足以来、自転車等駐車場(以下、「駐輪場」という)の整備及び管理を行い、放置自転車の減少に貢献してきたところであるが、近年、中長期的な人口減少の流れの中で、駐輪場の利用者数の減少により、直営施設の収入は減少傾向にある。
このような中で、令和2年度には新型コロナウィルスの感染拡大が生じ、駐輪場の利用者が大幅に減少したことにより、経常収支は7.7億円の赤字を計上することとなった。
このため、令和3年度から5年度までを計画期間とする中期経営計画を策定し、令和5年度末に経常収支の均衡を達成することとされた。これまで、各種利用増進策を講じるとともに、支出を見直すことなどにより、令和4年度には、目標である経常収支の均衡が達成された。また、新しい成長基盤の基礎造りとして、CYPS(Cycle Park web Service:web 上で申込みから支払いまで行うシステム)の段階的な開発・運用に着手したところである。
今後、これまでの、いわば「危機対応」の期間を脱し、将来に向けた投資を適切に行っていくためには、以下の2点が特に重要である。
一つ目は、「IT スタンダード化」、すなわち、IT 化をオプションではなく、原則とすることである。これは、単に、CYPS等のシステムの開発や運用、キャッシュレス化の推進等に止まらず、電磁ロックやゲートの設置等の機械化、さらには、駐輪場の省人化を前提とした不正駐輪対策、デジタル化への対応が困難な利用者への対応等、駐輪場の管理の全般に及ぶものである。
二つ目は、経営資源を「賢く使い」、成果を「賢く得る」ということである。「賢く使う」に関しては、IT スタンダード化に必要な投資に加え、駐輪場の施設を適切に更新するための修繕等を計画的かつ効果的に行い、適切な投資により、費用の削減に偏らずに、収益を確保しようとするものである。
このように、「賢く得る」ためには、適正な料金体系の設定が不可欠であり、適切なタイミングで、利用者、地方公共団体等の関係者の理解が得られる形で進めていくことが重要である。
こうした経営課題に対応するため、令和6年度から令和8年度までの3年間を集中投資・取組期間と位置づけ、同期間を計画期間とする「中期経営計画」を策定したところである。

2.中期経営計画の目標

CYPSの導入、キャッシュレス化を積極的に推進する
CYPSを計画期間の最終年度までに、定数ベースで約16万台(定期利用の約50%)に導入する。
計画期間の最終年度までに、一時利用キャッシュレス化率(一時利用の決済においてキャッシュレスに対応している駐輪場定数の割合)を約90%とする。
利用率を70%以上の水準に保つ
これまで、新型コロナウィルスによる落ち込みを経て、70%の水準まで回復してきたこと踏まえ、引き続き、利用者に対し徹底した利便増進策を講じることにより、計画期間中、利用率の水準維持を図る。
令和8年度末に経常収支の均衡を図る
計画期間中は、集中的な投資を行うこととしているが、計画期間の最終年である令和8年度末には、経常収支の均衡を達成する。

3.中期経営計画において取組むべき重点事項

(1) IT スタンダード化の推進

① CYPSの導入を計画的かつ積極的に推進する。
② CYPSの導入及びキャッシュレス化を推進するため、電磁ロックやゲートの設置等に3年間で約14億5千万円投資する。
③ CYPSを適切に運用するため、当センターに「CYPSセンター(仮称)」を創設し、当センターの管理部門、システム部門等の関係部門のみならず、管理会社との間で緊密に連携してCYPSを導入した駐輪場の管理を行う。
④ キャッシュレス化の推進は、現金取り扱いの縮小・集約、電磁ロックやQRコードの導入等により積極的に実施する。
⑤ 既存の内部システムについて、データの蓄積や活用等により業務の効率化・高度化を図り、システムの統合を目指す。
⑥ 各種システムの管理や更新、個人情報の保護をはじめとする情報セキュリティの強化を第三者目線等も活用しながら、適時適切に行う。
⑦ IT の豊富な知見を有する外部人材を業務委託等により活用するとともに、中長期的な IT 人材の育成を目指した採用を検討する。

(2) 徹底的な利便促進策の実施

① 駐輪場の利用者の動向を踏まえて、様々なキャンペーンを積極的に実施する。
② 利用者の増加が見込まれる大型車優先の駐車スペース拡充や、新しいモビリティへの対応など利用者のニーズに的確に対応した駐輪場サービスを提供する。
③ 空いた定期ゾーンを一時利用に活用することや団体からの需要も積極的に受け入れる等、管理会社と協力した利用促進策を実施する。

(3) 駐輪場の新設・建替え等

老朽化施設の建替えや施設の改良・改修などの計画的投資を行い、既存施設の長寿命化を実施する。この場合、残管理期間の短い施設の改良等についても、管理期間の延伸等と併せ的確に対応する。また、無料駐輪場の有料化等、新しい需要を取り込む。このような取組により、令和6年度当初のセンター総管理台数(見込み)約45万台を中期経営計画期間中に維持することとする。

(4) 修繕事業の推進

施設の老朽化による、基本性能、快適性、利便性の低下等に対応するため、引き続き修繕事業を実施し、機能回復、施設の長寿命化を図ることとする。計画期間中、概ね17億円投資することを目指す。
なお、現行の大規模修繕等実施計画については、令和6年度までの計画であるため、令和7年度以降の修繕事業の具体的な内容については、令和6年度中に検討を行う。

4.適正な料金体系の設定

駐輪場の料金体系は、施設の立地や駐輪需要に応じ、多様で柔軟に設定すべきものであるが、そのためには、利用者及び地方公共団体の理解を得ることが重要である。
特に、利用者については、利用料金が、利便性や安全、快適性など、駐輪場の利用に伴う受益に見合ったものとなる必要がある。
このため、料金体系の改定に際しては、CYPSの導入や機械化による利便性の向上、修繕による美装化、防犯カメラの設置による安全性の確保など、利用者の受益の増進に合わせて行うことが、利用者の理解につながり、ひいては地方公共団体の理解にもつながる。
このような状況と、物価や周辺の料金の動向等の要因も踏まえ、機会を逃さず適時適切に適正な料金体系を設定する。

5.効率的かつ確実な業務の遂行

(1) 計画的な発注・投資サイクルの遂行

中期経営計画等で定められた投資・支出を具体化し、確実に執行していくためには、事象や案件が発生するたびに個別に対応するのではなく、発注から執行までのサイクルを計画的に回していく必要がある。具体的には年度ごとに、投資・支出の計画を策定し、発注見通しを公表し、発注の手続きを経て、執行に至る、「計画的執行」を確実に実施する。
なお、特に、機器の調達に関しては、ランニングコストを含めたトータルのコストを考慮するとともに、機器を設置した後の故障履歴、緊急時対応等のデータを蓄積し、新たな機器調達における業者選定に活用する。

(2) リスク管理の強化

自然災害、事故、情報漏洩、不祥事等のリスクについては、初期対応を迅速かつ適切に行うとともに、再発防止策を講じて徹底させることが重要である。
このため、引き続き、事案発生における関係者間での情報共有、必要な意思決定を所定の手順に基づき確実に行う。また、一連の対応については、対応状況を整理するのみならず、対応を踏まえた再発防止策を講じるとともに、当センターにおいて共有し、また、それが着実に実施されているかフォローアップを行う。

(3) 管理の高度化への機動的・積極的な取組の実施

利用状況やニーズの動向を踏まえ、職員のアイデアに基づく特定課題へのプロジェクトチームの編成等により、利用促進策、料金の適正化、不正駐輪対策等、管理の高度化の企画・立案を機動的・積極的に行う。

6.引き続き取り組むべき重点事項

(1) 安全安心の確保

安全・安心のサービスを利用者へ提供するため、防犯カメラの設置、明るく寿命が長い LED 照明の導入を進める。

(2) まちづくりとの連携

「居心地が良く歩きたくなる(ウォーカブル)」空間の創出のようなまちづくりの動きと連携して、まちなかでの開発事業と一体となった駐輪場整備、連続立体交差事業で生じた高架下の有効活用、自転車ネットワーク計画などと連携した駐輪場整備を進めていく。

(3) 調査研究

自転車総合研究所においては、新しいモビリティの利用状況や海外事例の収集など、健全な自転車利活用の促進を図るための調査や駐輪場整備のあり方に関する調査を実施する。直営駐輪場等の利用実態や駐輪場の需要動向、立地可能性等について調査するとともに、自転車活用の新しい動きや地方公共団体の自転車施策の動向の把握、分析を行う。

(4) 広報活動

駐輪場においてロゴマークの使用を広範に行い当センターの認知度を高める。また、利便増進策の周知を図るため、横断幕やのぼり旗などの設置や利用者向けホームページを活用した広報活動に積極的に取り組む。
ホームページについて、駐輪場検索、定期の空き状況やキャンペーン情報の提供等、より一層利用者向け情報提供の充実に努め、利用者の利便性の向上、満足度の向上に努めていく。

(5) 海外無償供与

令和2年7月をもって当面休止とした引き取り手のない撤去自転車の海外無償供与の再開については、引き続き、当センターの財務状況などを勘案しながら判断することとする。