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2023.04.12

コラム

第16回 自転車駐車場が雨で利用しにくい日はわずかです

1.雨で自転車駐車場を利用しにくい日は本当に多いのでしょうか

前回のコラム(第15回)では、自転車駐車場の隠れた需要についてご説明しました。この隠れた需要を掘り起こすために、最大の障害の1つになっている雨について考えたいと思います。このため、自転車利用にとって最大の阻害要因であるとされる雨について、本当に「大きな要因」であるかを客観的なデータで見てみたいと思います。

以前のコラムでは、東京駅の出勤・登校時(朝の時間帯)での時間雨量1mm以上の雨のある日数と割合を示しました。時間当たり1mmの雨は、傘をさしている人もいれば、いない人もいる程度の雨量です。自転車で気になる雨量としては、傘をさしている人もいればささない人もいる時間雨量1mmを境にして、これを超える通勤通学の時間帯が年間どの程度あるかを見ることにします。

なお、朝の時間帯の雨量を対象として取り上げるのは、帰宅時刻は人によってばらつきがあり、また、あらかじめポンチョ等の雨具(比較的軽量コンパクトなものが出回っています)を携帯しておくか、又は覆いをした自転車の「かご」等に入れておけば(第14回コラムでご紹介しました豊洲駅前地下自転車駐車場ではこのような方がたくさんおられましたが、盗難等のトラブルはあまり聞きませんでした)、朝の時間帯の雨よりは対処は比較的容易だからです。

2.平日の朝の時間帯がポイントです

やはり、朝の出勤・登校時の雨が一番のネックです。朝の忙しい時間帯に、自宅で雨具等を着用し、自転車駐車場に来て、ポンチョ等を脱ぎ、かつ、乾かす場所がない場合、濡れたまま収納するしかないので、厄介です。これをクリアできれば、雨に対する対処もなんとか片付きます。この時間帯の気象台の雨量情報により、朝のラッシュの時間帯(一応7-9時59分)に時間雨量1mm以上又は1mmを超える日数(1時間以内のみのにわか雨の日を除く)を見ます。

これにより、平日の朝の時間帯について、1時間を超えて1mm以上又は1mmを超える雨量のある時間数又は日数がわかります。また、季節や月によっては、平日の朝の時間帯で1mmを超えて降らない月もあることが分かります。これらを知ることで雨に対する抵抗感が相当薄れるのではないかと思います。このような事実を自転車利用者にはしっかりと知ってもらう必要があります。

3.平日の朝の時間帯に雨が降っているケースは少ない

例えば、表1は、全国の自転車の利用を進めている都市の一部を対象にして、気象庁の気象データに基づいて、平日の朝の時間帯の1時間雨量を2022年について整理したものです。

2022年の官庁の平日は243日で、そのうち、上記都市については、1mm以上の時間数と降雨のあった日数は、それぞれ平均で、26.5時間(3.6%)、15.6日(6.4%)になります。歩く場合にほぼ全員が傘をさす程度の雨量以上(1mm超)ですと、年間の平均で18時間(2.5%)、11.1日(4.6%)となり、このうち、雨量の少ない大津市、奈良市、仙台市では、小雨以上で、時間数では、それぞれ1.7%、1.8%、1.9%となっています。最大の時間数の都市でも3.4%(福岡市)となっています。このように時間数や日数でも、極めて少ない時間数、日数そしてそれぞれ低い割合であることをもっと理解していただくことが必要です。

表 平日の朝の時間帯の1mm以上又は1mm超の雨量の時間数・日数

出典 気象庁 気象データに基づき作成

4.平日の朝に1mm超の雨が降らない月が年の半分ある都市

また、表1には出ていませんが、季節的にみても平日の朝の時間帯で1mmを超える雨が降らない月が意外にたくさんあります。例えば、同時間帯で1mm超の雨量が降らなかった月は、大津市で1-2月、4-6月、12月の6か月、奈良市で1-2月、4-6月、9月の6か月、仙台市で1-2月、4月、9-11月の6か月となっており、半分の月で雨量が1mmを超えた時間帯がないことなります。また、最も時間数の割合の高い福岡市でも、1-2月、6月、11月の4か月が同様になります。

5.雨でもポンチョで通勤通学している人がたくさんいます

また、このように朝の時間帯の雨の確率は低いのですが、仮に傘を常にさす人がいる1mmを超える雨量であっても、駅まで10分程度の短時間の移動ですので、ポンチョなどの雨具を活用すれば、一定は我慢できる人が多く存在することがアンケート調査でも明らかになっています。

すなわち、雨量がある場合、ポンチョ等の雨具を利用して運転する人の割合について、具体のアンケート調査でみますと、神奈川県茅ヶ崎市で1mmの小雨に対して、76%(回答者の市民122名中)はポンチョを着用して外出すると回答しており(自転車総合研究所調査)、滋賀県草津市で同様に雨天の日に43.5%(回答者の社会実験モニター147名中)は自転車を利用したと回答しており(上記自転車政策・計画推進機構調査)、東京都江東区豊洲駅前地下駐輪場利用者では同56%(回答者18名中)です(自転車政策・計画推進機構調査)。自転車利用者は、少雨の場合などは相当の割合でポンチョ等を利用して、自転車を利用していることが分かります。

上記の回答の場合、駅までの回答だけではなく長い距離をずっと通しで濡れていく場合も含まれており、駅までの10分間程度に絞った時のポンチョの利用で、この一層短い時間での自転車駐車場までの自転車利用を我慢できるかどうかもポイントです。なお、上記豊洲駅前地下自転車駐車場では、濡れたポンチョは、自分の自転車の上に覆うようにかけたり、濡れたままビニールの袋に入れて自転車のかごに覆いをつけて収納しているケースも多く見かけました。

以上、傘をさして歩いている雨の日は意外に少ないこと、仮にこの低い確率の雨の日でもポンチョ等を着用して自転車利用をしている人が多いこと、自転車駐車場までの自転車利用の時間は比較的短いことなどの情報を共有することで、雨に対する過剰な拒否反応を少しずつ解消し、又は和らげて、駅までの自転車利用と鉄道・電車との連携を拡大することが求められます。

また、自転車駐車場にポンチョ等の雨具を安全に収納する小さなロッカーや濡れたものをかけておく施設などもあると、通年型の利用にとって、より効果があると思われます。これらは、駅までやってくる自転車利用者に対して、道路交通法の改正により着用が努力義務化されたヘルメットを収容するスペースの提供とともに、これからの検討課題です。

文:自転車総合研究所 所長 古倉 宗治

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